国際男性デーに寄せて

「政治記者から米国在住駐夫、そして大学教授へ」と転身を重ねてきた中で積み上げた経験に加え、国内外の多様なデータを示しながら、「男が変われば男女ともラクになる 『自分事』で捉えるジェンダー」について、お伝えしていきます。
小西 一禎(元駐夫の大学教員) 2025.11.19
誰でも


「生きづらさ」という言葉、最近あちこちで耳にしませんか。

女性だけでなく、男性からも聞こえてくるようになった背景には、長年にわたり日本社会に染みついてきた“性別による決めつけ”、そして「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」といった固定的で硬直的な性別役割分業意識が静かに横たわり、影を落としています。

記念すべき初回の「the Letter」では、こうした意識がどのように形づくられ、今、何が変わり始めているのかを見てみます。そして、男性も女性も、今よりもっとラクに生きられるようになるには、どんな“気づき”が必要なのか。

そのヒントを、国際男性デー(11月19日)に合わせて、一緒に考えてみたいと思います。

時代が生んだ役割モデルの変遷

日本の性別役割分業意識は、時代とともに変化してきました。「男は仕事、女は家事・育児」を昭和モデルと位置付けると、平成の「失われた30年」では、男女雇用機会均等法の浸透なども背景に「男は仕事、女は仕事と家事・育児」へと次第にシフトし、令和に至っています。

しかしながら、内実をみると、家事・育児のしわ寄せや、ライフステージの変化による長期のキャリア中断は依然として女性に偏っているのが現状です。

こうした固定的で硬直的な認識を改める必要性を示すべく、内閣府は「令和5年版男女共同参画白書」(2023年6月公表)で、大きな提言を行いました。男性、女性を問わず、全ての人が希望に応じて、家庭でも仕事でも活躍できる「令和モデル」を実現できる社会に移り変わるべきだと訴えたのです。

固定化された役割がもたらす「生きづらさ」

「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」とするジェンダーに基づく意識は、男女ともに縛りつけ、生きづらさにつながっています。とりわけ、男性は「男子たるもの、外で長時間バリバリ働くのが当然であり、美徳だ」という、強烈なまでの性別役割分業意識、すなわち「男は仕事」を体現するジェンダー規範に苦しめられてきました。

一方、女性の生きづらさも深刻です。「男らしさ」を追求する男性が長時間労働を続けた結果、家事・育児のしわ寄せは女性に偏ります。思う存分に働きたい女性も、家庭内における性別役割が一度確立してしまうと、家事・育児は自分のタスクだと思い込むようになり、希望が叶わなくなってしまうのです。これにより、ジェンダー平等実現への道のりは遠のきます。

現代の男女ともに生きづらさを抱える背景には、こうした「固定観念」や「揺るぎない性別役割分業意識が影を落としています。この意識から解放されれば、誰もがラクに生きられるのではないでしょうか。

若年層で浮き彫りになる意識の変革

こうした中、若年層では大きな変化が起きつつあることが内閣府の調査で浮き彫りになっています。前出の「令和5年版男女共同参画白書」は、

 ①若い男性ほど労働時間を減らし、家事・育児時間を増やしたいと考えており、家事・育児参画への抵抗感も低い。

 ②若い女性ほど家事・育児時間を減らしたい

とする意識調査を紹介しています。まさに、「令和モデル」の実現に向けた希望の光と言えましょう。

しかし、社会全体の意識との間にはギャップが存在します。内閣府が2025年2月に公表した「男女共同参画社会に関する世論調査」をみると、社会全体で男女の地位が「平等」だと答えた人は16.7%にとどまっています。

ジェンダー問題を「自分事」として捉えてみては

長らくジェンダー問題は「女性だけの問題」と捉えられがちな空気感がありました。しかし、これは決して女性だけの問題ではないのではないでしょうか。

ジェンダー平等実現に向けた道のりの第一歩は、男性ひとりひとりが「ジェンダー問題は他人事ではなく、自分事なのだ」と意識を変革することから始まると思います。男性こそ、ジェンダー平等実現に向け、積極的に考え、発信し、語りかける努力が必要です。

そして、ジェンダーや男女共同参画を巡る価値観が急速に変化している今、求められるのは、性の違いを超えた相互理解の深化です。

性別を問わず、あらゆる場において男女が半数ずつ集まり、相互理解を進めていくことが重要だと考えます。男性だけが集まったり、女性だけが集まったりして、反対のジェンダーの悪口や愚痴を吐き出すのではなく、双方が歩み寄り、共に考える努力が求められています。いがみ合っている場合ではありません。

こうした意識変革の積み重ねこそが、男女ともに「生きづらさ」から解放され、希望に応じて仕事でも家庭でも活躍できる「令和モデル」の実現へと、社会は大きく前進していくことでしょう。


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